道路脇の斜面に、種や土のような材料を吹き付けているのを見たことはありませんか。法面緑化とは、法面(のりめん)に植物が育つ環境をつくり、斜面の表面を保護する工事です。植物で覆うことで雨による表面の浸食を抑え、周囲の景観との調和も図ります。
ただし、種をまけば必ず緑になるわけではありません。斜面の土や勾配、植物が育つ時期などに合わせて方法を選びます。この記事では、緑化する理由と当社が扱う三つの工法、そこで行われる作業を順に説明します。
法面緑化とは?斜面に植物を育てる目的
法面は、道路や宅地を造るために地面を削ったり、土を盛ったりしたときにできる人工的な斜面です。むき出しの表面が雨水にさらされる場所もあります。法面緑化では、斜面に植物を導入し、育った植物で表面を覆うことを目指します。
目的の一つは、雨水による表面の浸食を抑えることです。植物が育つと、葉や茎が雨を受け、根も表面の土に関わります。緑を取り戻すことで、道路や周辺の自然環境との景観上の調和も図れます。斜面防災対策技術協会の資料も、表面の保護と周辺環境との調和を法面緑化の目的として説明しています。
植物が十分に育つまでには時間がかかります。施工後の気象条件によって生育の結果も変わるため、吹き付けた直後に斜面全体が緑で覆われる工事ではありません。植物が育つための基盤が保たれることや、現場の環境に合う植物を選ぶことが前提になります。
「法面」という言葉自体を先に確認したい方は、法面と一般的な斜面の違いを説明した記事も読めます。ここでは、その法面を植物で保護する方法に絞ります。
なぜ斜面に種や土を吹き付けるのか
法面は平らな畑とは違い、土や種を置くだけでは流れたり、斜面に定着しにくかったりします。そこで、種子だけを単独でまくのではなく、肥料や木質繊維、土壌などを含む材料を、工法に応じて散布・吹付けします。どんな材料をどの程度施工するかは、法面の状態と目指す植生によって変わります。
たとえば、当社が掲載する種子散布工では、木質ファイバー、肥料、種子、粘着剤などを含む材料をスラリーポンプ等で散布します。客土吹付工では土壌を主体とする材料を使い、植生基材吹付工では堆肥などを含む基材を吹き付けます。「吹き付ける」という動きが似ていても、斜面に与える材料と施工の厚さは同じではありません。
施工前には、土の硬さや酸度、表面の状態も確認の対象になります。国土交通省の土木工事共通仕様書には、種子散布前の土壌試験や、吹付け面の浮土・雑物の除去、材料を混合して均一に吹き付けることなどが定められています。材料を選んで機械で吹き付ければ終わり、という作業ではないのです。
参照:国土交通省「土木工事共通仕様書 第14節 法面工(共通)」
当社が扱う法面緑化の3つの方法
当社は環境緑化工として、種子散布工、客土吹付工、植生基材吹付工を事業内容に掲載しています。違いを見るときは、材料、吹付け方、施工する層の厚さに注目してください。以下の厚さは当社が紹介している工法の説明であり、どの現場でも同じ厚さに施工するという意味ではありません。
種子散布工は種子などを含む材料を薄く散布する
種子散布工では、木質ファイバーや肥料、種子、粘着剤などを含む材料をスラリーポンプ等で散布します。当社の事業内容では、厚さは1cm程度と説明しています。土壌が比較的肥沃で、浸食の少ない切土の法面や盛土の法面などを適用例として挙げています。
名前から「種を直接ばらまくだけ」と思われがちですが、植物が育つことを考えて複数の材料を組み合わせる方法です。薄く散布するため、どんな斜面にもこの方法を選べるわけではありません。
客土吹付工は土壌を主体とする材料を吹き付ける
客土吹付工では、黒ボクなどの土壌を主体とする植生基材を、ポンプや圧縮空気を使って斜面に吹き付けます。当社が紹介する施工厚は1~3cmです。種子散布工と比べると、斜面に土壌を主体とした層を設ける点が分かりやすい違いです。
当社の事業内容には、必要に応じて樹脂ネットなどの緑化基礎工を併用する方法も載せています。斜面に材料を吹き付けるだけで、生育のための基盤が必ず安定するとは限らないためです。
植生基材吹付工は堆肥などを含む基材を吹き付ける
植生基材吹付工では、バーク堆肥やピートモス、土砂などを主体とする材料を、モルタルコンクリート吹付機で斜面に吹き付けます。当社の事業内容では厚さ3~10cmと説明しています。先の二つとは、扱う基材や吹付けに用いる機械、設ける層の厚さが異なります。
三つを厚さだけで優劣づけることはできません。どの植物を育てたいか、地盤や勾配がどうなっているかなどを踏まえて方法を検討します。国土交通省の仕様書でも三工法は別々に区分されています。
参照:国土交通省「土木工事共通仕様書 第14節 法面工(共通)」
工法ごとの材料や施工方法をもう少し確認したい方へ。
緑化だけでは対応できない斜面もある
法面緑化は、斜面全体の崩壊を植物だけで止める工事ではありません。表面の浸食を抑えることと、地盤の深い部分を含めて斜面の安定を確保することは、分けて考える必要があります。崩壊のおそれがある法面には、構造物による保護工を併用する場合があります。
植物の側にも条件があります。生育するまで材料が流されないか、土の状態は適しているか、乾燥しやすい時期ではないか。勾配が急で植生工だけでは施工しにくいときには、緑化基礎工を組み合わせることもあります。緑化した直後の見た目だけで成果を判断せず、その後の生育を見ていく必要があります。
当社の事業内容には、緑化工のほか、モルタル・コンクリート吹付工や現場吹付法枠工もあります。現場に合う方法を考える際に、緑化とほかの法面工事を同じものとして扱わないことが大切です。
法面緑化はどんな作業につながるのか
法面緑化の仕事は、斜面に種を吹き付ける場面だけではありません。一般的な植生工の施工には、吹付ける面の浮土や雑物を取り除くこと、材料を混ぜること、面に合わせて均一に吹き付けることなどが含まれます。施工後も植物の発芽や生育を考えて養生します。
参照:国土交通省「土木工事共通仕様書 第14節 法面工(共通)」
当社が扱う三工法でも、種子散布工と客土吹付工では使う材料や機械が違い、植生基材吹付工ではさらに別の吹付機を用います。法面で作業する以上、足元や高さ、機械と周囲の人との位置関係にも注意が必要です。実際の担当作業は工法や現場で異なり、一人が最初から全工程を担うという意味ではありません。
植物を相手にするため、吹き付けたその日に完成後の姿が見えるとは限らない点も、この仕事の特徴です。材料を斜面に施工することと、その後に植物が育つことは別の段階にあります。天候や斜面の条件を踏まえて施工し、生育するための基盤をつくります。
当社は佐賀県唐津市を拠点に、佐賀県・福岡県・長崎県で法面工事を手掛け、法面作業員を募集しています。未経験の方には社長や先輩の職人が指導します。斜面を緑にする方法だけでなく、どんな仕事に関わるのか気になった方は、勤務地や募集内容を確認してください。
法面を守る仕事に興味を持った方へ。

